九州豪雨のゆくへ

7月5日から6日にかけて、福岡県と大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨は、川を氾濫させ多数の家屋を浸水させ、多くの死者を出すという甚大な被害を与えました。

映像で見ても分かる通り、特徴的だったのはその流木の凄まじさでした。河川に流れ込んだ総量はおよそ20万トン、36万立方メートルと推定され、土砂崩壊によって河川へなだれ込んだそれらの木々が被害を拡大したのです。


▲国土地理院YouTubeより

その多くは人工林のスギでした。被害の大きかった福岡県東峰村の渋谷博昭村長はこう語っています。

「国策に従いスギの植林を進めたが…。林業の衰退とともに手入れが行き届かなくなったのも原因では」「国策で植林したが、今は伸び放題。雨が降るたびにおびえなくてはならない」(『西日本新聞』)

7月17日付けの『西日本新聞』朝刊ではこう解説されています。

 福岡県と大分県の豪雨水害は、土砂崩れによる大量の流木が被害を拡大した。被災した集落には根が付いたままの大木が広範囲に横たわり、人工林のもろさを印象づけた。一帯は林業が盛んな地域。流木の原因をたどると、日本の林業が克服できていない課題に行き着く。

(中略)

なぜ、これほど大量の木々が流出したのか。地元の林業関係者や専門家は複合的な原因を指摘する。

朝倉市や隣の東峰村の山あいは、地表の近くに花こう岩が風化した「まさ土」が堆積しており、大量の水を含むと崩れやすい。

そこに植えられたのは、根を深く張らない針葉樹のスギやヒノキ。種子から成長する場合は深く密集した根を張るが、人工林は挿し木から育てるため、根は浅く、密度も低い。木を真っすぐに育てるにはある程度密集させるため、根は広がらない。(『西日本新聞』07月17日)

林野庁と国立研究開発法人森林総合研究所は、流木災害の構造や減災対策を探るチームを初めて作って現地を調査したそうですが、21日の記者会見では

「山腹崩壊は記録的豪雨により、森林が持っている土砂崩壊防止機能が限界を越えたことと、両側が狭まった斜面に雨水が集中したために発生した。一方、間伐など森林管理との関連性は確認できなかった」

という見解を示したのだそうです。まあ自分たちの体面もあるのでしょうが、現地の空気とあまりに乖離した発言ではないでしょうか。

8月11日放映された池上彰さんのニュース解説で、「最近流木災害が増えているのは、国の政策が原因」しかも「スギの根が張らないから」というところまで話が出たと聞いています。

九州のスギは「挿し木苗」といって、自然の種から作られたものではなく、枝を切って地中に挿して作られたものが多いのです。挿し木のスギは直根がなく貧弱な根張りで、保水力も土をつかむ力も弱い。九州ではそれらの苗が一斉に植えられて、それが大きくなり、手入れが遅れたままスギだけがびっしりと立ち並んでいるのです。

本当は、大きく間伐(間引くこと)して、根の張りをよくさせ、さらに根張りのいい広葉樹と共存させるような、自然親和型の林業をしていくべきでした。

それにしてもあそこまで育ったスギが無惨な姿をさらしているのが残念でなりません。住宅の梁桁に使えそうな太いスギも多く見受けられたからです。

ところで、床上水害を受けた住宅は、在来工法なら畳や建具を変えることで再生可能ですが、合板で固めているツーバイフォー工法の住宅は、合板が水を吸うことで支持力がなくなり、建て替えねばならなくなります。

合板は水に脆弱であることは覚えておきましょう。

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